布佐の地に生まれた
稀有な合唱団

12月下旬、深々と冷え込む竹林に力強く澄んだ歌声が響きわたる。
ほんのり灯る竹灯籠の光とともに、見るものを内側から温めてくれる歌声。
その名も、アンサンブル・ルミエール(光)。
歌うことに魅了された10代・20代の若者が学業や仕事で
多忙を極める合間をぬって、歌でつながり続ける稀有な合唱団。

地域の合唱団が高齢化する中に、10 代・20 代の若い世代で構成された合唱団があることを知り、興味深く思った。今年で結成8年目を迎えるというアンサンブル・ルミエール(以下ルミエール)について、指揮者の青井眞吾さんとコンサート・マスターの當前一輝さんからお話しをうかがった。

アンサンブル・ルミエール

設  立 2013年5月
メンバー 44名
活動内容

合唱練習/毎週火曜日・第2・第4土曜日19時~21時

ステージ/我孫子市合唱祭、招聘のあったイベント

お問い合わせ 090-4073-5886(當前)
指揮者 青井眞吾
ボイストレーナー 吉田真澄

Q:いつ、どのような経緯で合唱団ができたのでしょうか。

青井:布佐中学校には、3年特設合唱団がありました。歌うことが大好きな仲間が集まって、合唱をやりたいという人達40~50人が参加し、お昼休みに練習を重ね、市内音楽発表会や中学校合唱祭で歌っていました。その生徒達が、卒業すると歌う機会が少なくなるのでこの仲間で合唱を続けていきたいと相談に来たのです。そこで、学校は貸さないよ、合唱を続けるのは自分たちの
道楽なんだから、会場の確保・楽譜の調達・指導者の依頼など、それらを乗り越えていこうという覚悟があるならやってみなさいと突き放しました。そうしたら、卒業直前に企画書を作ってきました。こうして、震災2年後に、この年の卒業生14 ~ 15人で新たな合唱団が結成されました。団の名称「アンサンブル・ルミエール」は、団長の荒井華奈さんが「震災で心傷ついた布佐のまちに
とって希望の光(ルミエール)になりたい」と考え決まりました。

Q:メンバー数と確保の方法を教えてください。

當前:現在のメンバーは44人で、うち女性25人、男性19人です。毎年、布佐中学校の卒業生に声をかけていますし、青井先生とのつながりで我孫子中学校の卒業生も入っています。布佐出身者でなくても、どなたでも入っていただけます。

Q:練習はいつ行っていますか。

當前:最近は毎週火曜日と第2、第4土曜日の19時~21時まで練習しています。それぞれが学校や仕事が終ってから集まるので、練習時間は実質30~40 分です。来られる時、来たい時に来ればよいとしています。
青井:東葛地域の中学校を出た若者達にとって、合唱音楽は興味の下の下に位置付けられているはずです。学業・部活やバイトで多忙な中で時間を捻出し、平日の夜に練習に集まってくるのは驚異的なこと。僕は「奇跡の合唱団」と呼ぶようになりました。

Q:練習場所はどちらですか。

當前:学校や職場への帰り道ということで、これまでは布佐駅2階にある市民センター布佐ステーションホールで練習していました。ところが、一昨年12月に、突然そこが閉鎖されることを知りました。自分達の練習場所がなくなることについて、地元の意見に耳を傾けてほしいと考えて、市議会議員に話を聞きに行ったり、市議会を傍聴したり、市長に直接お話しする機会までいただき、思いがけず地方自治について学ぶことになりました。その結果、布佐ステーションホールは行政サービスセンターの大会議室として残ることになりました。そこも使えますが、今は新型コロナウイルス感染防止のために密にならないよう、近隣センターふさの風を使っています。

Q:練習の成果は、どのような機会に発表していますか。

當前:1 年の最も大きな発表の場は、11 月の我孫子市合唱祭です。それから、東日本大震災のチャリティーイベント「3.11鎮魂竹宵の集い」も、ルミエールの設立趣旨に最も近いイベントとして、去年中止になった時を除いて毎年参加しています。出演のご招待をいただき、「市民のチカラまつり」や「新春竹宵」にも参加しています。多い年は、毎月のように本番に臨んでいました。

Q:演奏曲は、誰がどのように決めるのでしょうか。

當前:僕と他3人で担当するコンマス・セクションで曲目を決めます。まず合唱祭を1年のメインとして大きな曲を決めます。演奏依頼があった時には、そのイベントの趣旨・時間・客層を考えて決めます。今使える曲は15~20曲ありますが、その時々で出演できるメンバーが変わるので、選曲はむずかしいです。

Q:ルミエールの音楽の特徴はどんなところにありますか。

當前:日本の曲を大切にしようという気持ちがあります。基本コンセプトはアカペラの合唱で、古謡から童謡まで幅広く歌います。様々な合唱コンクールで取り上げられる作曲家で、アカペラの曲もたくさん編曲している合唱界の神様、信長貴富さんの『無伴奏混声合唱による日本名歌集 ノスタルジア』の中から選ぶことが多いです。
青井:ピアノの伴奏があると、それにのって安心して歌うことができます。伴奏なしの合唱曲をアカペラといいますが、歌い手が音程をキープしなければならないので、技術的には難しくなります。でも、人間の声だけでつくり出すハーモニーにこそ合唱の醍醐味があります。去年の12 月19日の「新春竹宵」では竹林が切り開かれた野外ステージで歌いましたが、建物の中なら反
響した声に包まれて歌えるけれど、野外では吸い込まれます。しかも歌い手の間にソーシャルディスタンスを取らなくてはならならず、お互いの声も聞こえづらいという合唱にとっては劣悪な環境ながら、ほんのわずかでも音程を下げることなく要所のハーモニーをかっちりと決めるという離れ業を彼らはやり遂げてくれました。

Q:すばらしいですね。発表の機会ごとに成長を続けるルミエールですが、コロナ禍は活動にどんな影響を与えているでしょうか。

當前:昨年の3 月から7 月まで練習は休みにしました。8月から再開したのですが、皆が少しでも安心して練習を再開できるよう「練習再開のためのガイドライン」を作りました。また、東京混声合唱団が発案して作られた「歌えるマスク」を注文し、届いたところで練習を再開しました。練習を休止していた時でも活動は停止させず、5月から7月はZoomライブを週一回開いていました。ピアノリサイタル、ルミエール所属のシンガーソングライターaiiさんによるミニコンサート、青井先生の音楽授業などを行いました。休んでいる間に、歌うことは何にも代えられないものと感じ、当たり前のことが当たり前にできなくなったことを痛感しました。
青井:市民活動は不要不急であるという言説を耳にしますが、これは誤りだと思います。メンバーが互いに心のつながりを保つためにZoomを使って気持ちをつなぐことや、ガイドラインを作ったことなど、ルミエールの若者達の音楽への向き合い方はなかなかユニークで立派だと思っています。

Q:これからの活動としてやりたいこと、コンマスの抱負をお聞かせください。

當前:音楽的には、ルミエール独自の演奏会をやりたいというのが今の夢です。そのためには、レパートリーも増やさなくてはなりませんが、これはぜひやりたいです。コンマスは高校2年生の時からやっていますが、ルミエールが紆余曲折しながらもこれまで積み上げてきたものを壊したくはありませんその責任を担っているので、舵取りをまちがえないようにしていきたいと思います。

 これまで設立経緯など断片的に聞いてはいたが、改めてうかがうことで、ルミエールの光とはまずは指揮者の青井先生がメンバーに注ぎ込む光のような情熱であることに気づいた。コンマスの當前さんの団運営もみごとであり、年齢的には若い合唱団であるけれど、円熟した安定感を感じさせられた。コロナ禍時代の一服の清涼剤であるルミエールの音楽を、一フアンとしてこれからも応援していきたい。

 

暮らしに根付く手仕事が生む安心の味
「焼き菓子小屋 こなこな」

 週に2日しか営業していないお菓子屋さんが我孫子市布佐にある。店内に並ぶのは焼き菓子がメインだが、毎月第3金曜日に「お菓子の定期便」と名付けて、予約者に普段販売していない生菓子や季節のケーキを1500円で販売している。
 店主の森さやかさんは、2 人の子どものお母さんだ。結婚前までパティシエをしていた経験を活かし、子どもが小学校に上がるタイミングで仕事を再開しようと考えた。しかし、ケーキ店の勤務時間は長く、どこかに勤めることは考えなかった。2013年に自宅の敷地内に夫といとこの協力でウッドデッキを作り、お菓子の製造、販売を始めた後、現在の山小屋風の店舗を構えた。独立して8 年。「大変なこともあるけれど、自分で時間を組み立てられるのがいいです」と森さんは微笑む。

清潔な厨房が見える店内と、


山小屋風の店舗

 お菓子作りのテーマは「自然にあるものを自然に使いたい」「昔おいしかった記憶があるものを追いかける」。土いじりがしたくて都内から転居してきた経緯もあり、いちご農家に手伝いに行くこともある。
 まだまだ子育てメイン担当の母親にとって、子育てと仕事のバランスは普遍的なテーマだ。家事、育児も大事だけれど、仕事や好きなことで自分を表現することも大切。森さんのように暮らしを基軸に、子どもの成長に合わせて無理なく働くことは、本人と家族にとって幸せな選択だと感じる。森さんの地に足のついた生き方は、お菓子作りにも当然表れていて、口に入れるとホッとする味。だからまた食べたくなる。

■「焼き菓子小屋 こなこな」
営業日・時間:木・金曜10:00 ~ 16:00
我孫子市布佐3280-8 Tel.04-7103-2452
Instagram:conacona2013で検索
※バースデーケーキほか
予約は営業日以外も応相談

お菓子の定期使用の「フレジエ」(予約可)


季節のフルーツを使った焼き菓子

食べるライター 片岡綾

おいしいものを探して自転車で街を駆け巡る
日々の中、我孫子の食の豊かさに開眼。「食べ
るために生きる」がモットーの40代一児の母。

 

 

 

 

我孫子は歴史と文化が蓄積された街。
史跡や場所の由来を知ると、街歩きを深く楽しむことができます。
人の知らない我孫子を発見し続けている越岡禮子さんが、
お勧めのスポットをシリーズで紹介します。

 

郷土史家/江戸東京散歩茜会 代表 越岡禮子

 

 

第4回 布佐の名建築を訪ねる

 布佐は明治34年、成田鉄道開通以前は河岸の町として栄え、銚子の魚を江戸の日本橋にあった魚市場へ届ける街道の始発点でもありました。民俗学者、柳田國男、気象学者、岡田武松ゆかりの地でもあります。現在は当時の面影
は薄れていますが、それでも利根川堤上から見る布佐の町は昔ながらの黒瓦の屋根や木々の繁みが残り、蔵や旧家と思われる趣きのある建物があります。今回は手賀沼開墾に功績のあった豪農旧井上家住宅と江戸までその羽振りが
知られていたという豪商、榎本家を訪ねてみましょう。

旧井上家住宅

■旧井上家住宅 【我孫子市指定文化財】
 布佐駅南口から布佐図書館前の旧道を西北に15分程進むとやがて左手に嘉永4年建築の見事な薬医門があり、ここが亨保期に江戸町人、井上佐次兵衛家が手賀沼開墾を手掛け、名主となった屋敷です。市内で最も古く、広大な建築です。母屋は安政5年に建てられ、二番土蔵、新土蔵、漉場、裏門、庭園、屋根付塀等があり、一般公開されています。

布佐御三家 榎本家

■布佐御三家榎本家 【ナリタヤ前 外観のみ】
 榎本家は元禄の頃から名字帯刀を許された豪商で大地主でした。明治、大正期にかけ、14代、15代当主は各々、布佐町長、衆議院議員を務めています。榎本家は芭蕉が立ち寄った網代場の近くにあり、布佐河岸に隣接していました。昭和7年に建てられた薬医門は「我孫子市第10 回景観特別賞」を受賞。邸内の和風庭園には見事なしだれ桜があり、形さまざまな幾つもの灯籠が素晴しく、河岸の時代に使われた川に向いた玄関も残されています。田山花袋の小説『野の花』にその豊かな佇まいが描かれています。

 

 

 

 1月29日、我孫子市主催のオンライン連続講座の第一回を協力開催しました。企画、チラシデザイン、広報が功を奏して定員を超える方がご参加。アメリカ・カリフォルニアに住む講師の話を聴きながらZoom のチャットも大盛況でした。進行担当に緊張しながらも、終わった後の充足感と言ったら……。2月、3月も学びと出会いを深めます!(片岡 綾)

施設利用のご案内 我孫子で活動を「みつける」「はじめる」お手伝いをしています。
■開設時間 9:00-21:00
      17時以降は予約のみ開館。17時以降のご予約は2日前までにお願いします。
■休館日  毎月第2・4月曜日 祝日は開館

270-1151 我孫子市本町3-1-2 けやきプラザ10階
Tel・Fax 04-7165-4370
https://abikosks.org/
abikosks@themis.ocn.ne.jp

 
まち活マガジン あびこ市民活動ステーション情報紙No.17
発行日:2021年3月1日/発行元:あびこ市民活動ステーション[指定管理者:(株)株式会社東京ドームファシリティーズ]
デザイン・レイアウト/人を通して障害を識るフリーペーパー「gente」編集長 大澤元貴

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