【子ども応援団事業】好き(ゲーム)から未来が見える―若者の経験値を上げる社会サンカクの場づくり―

子ども応援団事業 Part6

好き(ゲーム)から未来が見える ―若者の経験値を上げる社会サンカクの場づくり―

2022年9月25日開催

動画はこちら:https://youtu.be/0JCnD14LX48

サンカクシャ荒井さんのお話

荒井さんってどんな人?一人のホームレスとの出会い

 最初に自己紹介をします。私は平成元年生まれの32歳で、2008年からホームレス支援の問題に取り組んでいます。両親が教員の家庭に育って、勉強しろって言われるのにすごい反発して生きてきた人間です。「勉強すればできるのにもったいない」って言われながら授業をサボってるっていうようなタイプだったんで、大学もなんとなく通ってたんです。

 大学がつまらなくて放課後、新宿をウロウロしていたら、新宿駅の階段で具合悪そうなおじさんが急に座り込んだんです。「大丈夫ですか」って声かけたら、「俺はホームレスだ」とか言い始めて、急に身の上話をマシンガントークでされて、結局2時間ぐらい断れずに聞いてしまいました。終電になって「帰ります」って言ったら、「来週も話そう」と言われて、「来週の水曜日の7時にマックで集合」ってなって。

 携帯電話を持っていないおじさんだったので、翌週ためしに行ってみたら待っていて。またマシンガントークで身の上話をされて、っていうところから、ホームレスの1人のおじさんを知りました。

 大学でやる気がなかった私は、このおじさん面白いなと思ったんです。毎週おじさんと交流を重ねていくところから始まって、ホームレスの問題を初めて知って、いろんなことを調べて、団体を調べて、ボランティアに行ったりインターンに行ったりして。大学の勉強より路上で学んだことの方が本当にすごく大きかったと思います。

せっかく入った高校を中退していく子ども達

 当時、2008〜2009年でリーマンショックがあったりして、ちょうど若年のホームレスが増えた時期がこの頃です。20才でホームレスの人とかがいて、ほぼ同い年なので、そんな人が路上にいるのにすごく衝撃を受けました。

 彼らと話していると、みんな幼少期から親とうまくいってなくて、家を追い出されてしまうとか虐待を受けているとか、昔から課題があったっていうことが共通していたんです。そんなこともあって、たまたまの縁で「子どもの貧困」という言葉に出会って、埼玉県がアスポート事業(アスポート=「明日へのサポート」+明日への港(ポート)」埼玉県が全国に先駆けて始めた、子どもの学習支援事業)という学習支援をやっていることを知りました。

 私はちょうど埼玉県出身で、たまたま知り合いの紹介でアスポート事業の団体に繋がって、ボランティアをしたのが人生の過ちでした(笑)。

 ホームレス支援も楽しかったんですけど、ここで出会った小中学生がすごく良くて。この子たちとの出会いがやっぱり今の活動を作っていますね。勉強を教えて無事にみんな高校進学を果たしたんです。

 掛け算もできないような子に中3の夏に出会って、一緒に塾の外に出てサボりながら、「お前はどうしたいんだ」なんて言いながら勉強して。やんちゃな子たちが無事に高校に受かったんですけれど、みんな相次いで中退をしていって。

 「ものすごく頑張ったあの瞬間はなんだったんだろう」ってすごい思ったんです。課題をかかえた形で高校に入っても、けっこう大変なことがいっぱい起こるんだなっていうことを感じました。

 ただ当時は高校中退すると(今もすっごい支援は少ないんですけど)本当に何の支援もなくなっちゃうんです。大変だなと思って。この子たちと出会ったからには、やっぱりちゃんとサポートしていきたいなという思いをずっと持っていました。その子たちと関わってるうちにいろんな子とつながり始めたんです。

 自分は、大学卒業後に会社に勤めましたけど、会社の仕事にはものすごく興味がなくて。営業やっていたんですけど、架空のアポを作って、若者と会っていたりして、最悪な社会人だったなって思います。5時を回ると、残業はしませんと言ってスーツを着たまま、ヤンキーたちと自転車2人乗りの鬼ごっこをしたり、ロケット花火したりとかして遊んでました。

 警察にだけはつかまらないように頑張っていたのが私の社会人1、2年目の頃でした。そして、会社はつまらないから辞めて、NPOを立ち上げて今に至ります。

NPOサンカクシャ立ち上げと生々しいお金の話

 最初にちょっとサンカクシャの活動の内容を駆け足でお話してから、生々しい話をしたいと思います。団体としては、今、親や身近な大人を頼れない若者のサポートをしています。

 年齢でいうと大体15歳から25歳くらいが対象です。

 今、サポートしている子は実数でいうと200人ちょいぐらいかなっていう感じですけど、めっちゃ大変な子がいっぱいつながってきています。

 1人とつながると3年~5年かけてサポートするので、人数が積み上がるだけでも、私達も、しんどくなってきているっていうのが最近の現状です。

 やっていることは居場所作りと仕事のサポートと住まいのサポートという3本柱で、今、2拠点の居場所があって、シェアハウスは4拠点あります。

 家賃だけで月100万円ぐらいかかっていて、本当に死にそう…(笑)。行政から支援の要請はくるのに、行政からは1円も貰ってないのはどういうわけかなあと思います。

コロナであぶり出された、支援が必要な若者たち

 コロナを境に虐待を受けている子どもの支援の割合がものすごく高まりました。というのも、前までは放課後、学校が終わってから居場所にくる子たちが多かったんですけれど、コロナが始まって、どっちかっていうと自粛に耐えられなくなって逃げ場として居場所を使いたいっていう子の割合がすごい増えました。今は8〜9割ぐらいが虐待を受けた子達です。

 そういう子たちって本当に1人で何でもやらなきゃいけないんです。それこそ最近関わっている子だと16歳とかで家を追い出されちゃって、うちのシェアハウスにくるんです。勉強のことも学校のことも進路のことも生活のことも全部1人でやらないきゃいけないので、けっこう大変だったりしています。そういう子のサポートをしています。

 特徴的なのが、虐待を受けていて、人と関わるのはすっごい怖いって感じている子がたくさんいることです。知らない大人とはやっぱ基本的に関わりたくない。説教されようもんならすぐ逃げるみたいな感じの子が多いんです。私たちの団体は、そんな意欲がなくて今の自分の現状を変えたいとか勉強頑張りたいとか就職したいとか、そういうのが全くない子が好きです。

 何にもやる気がない子をあの手この手で感情を引っ張り出して、楽しい経験を一緒にして、これやってみたいっていうものをあぶり出して、それを形にする中で、いろんなドラマを経験して、なんか頑張って自立していくみたいな。本当に1人1人伴走して、どう生きていくかっていうのに寄り添ってるのがサンカクシャのやってることかなと。

 特に、若者たちって支援を受けたことがない子が多いです。「行政とか知らない人からの支援とかダサい」とか、「サポートなんか受けねえから」みたいな子たちがほとんどだっていう感覚があります。その子たちにいかに出会うか、いかに仲良くなるか、いかに自立につなげるかみたいなのが、けっこう大事だったりするかなと思います。

やっぱり15歳~25歳の若者の支援が少ない

 これ、ずっと直さなきゃいけないなと思って直していない適当な概略図ですいません。何が言いたいかというと15歳までの支援はすごく増えたなと。サンカクシャは、主に東京都豊島区で活動しているんですけど、人口29万人ぐらいで学習支援とかだけで20ヶ所とか、子ども食堂も2〜30ヶ所ぐらいあって本当に増えたなと。ただ、15歳以降が行ける場所は4ヶ所と、豊島区ですらすごく少なかったりしますし、全国的にこの15歳、特に義務教育終わった後の支援ってすごい足りてない感じがあります。

 基本的に中学校って区の管轄なんですけど、高校に入ると東京都の管轄になって、豊島区に住んでいた子が板橋区の高校にも行ったりするんです。ですけど、情報の引き継ぎはほぼできてなくて、行政区の境に多いんですけど支援がいっぱい切れちゃって、高校中退すると何の支援もなくなっちゃって、という現状があります。

 児童福祉法の定義で18才になると、いったん支援が切れちゃうところもあったりして、18才と15才で支援が切れやすいっていうのが現状としてあるかなと思っています。

 豊島区はそんな現状に対して3〜4年前ぐらいに「子ども課」を「子ども若者課」に名前を変えて、「子ども若者総合相談センター」というものを作って、若者の支援を区でもやろうっていうメッセージをちゃんと出したんです。

 今、隣の文京区でも活動してるんですけど、「若者」がつく課がなくって、どこがやるのか今、押し付け合っていて、非常にやる気がない(なんて言っちゃいけないんですけど)。やりたくないっていうのが自治体の本音だったりするのかなっていう気がしていて。…というくらい、若者を誰がみるのか、制度の狭間すぎて、皆が押し付け合いをしているみたいな現状が起こりやすいような感じだったりします。 

 ここに書いてある通り、就労支援は現場の肌感覚だと、25才近づいてくるとだんだん焦り始めるんですけど、10代とか20才前半は働くとか自立ってあんまり考えられなかったりするので、就労支援の窓口には行かないことがすっごい多いので、本当に狭間だなっていうのをすごく感じています。なおかつやる気もなかったら行政にもつながらないし、日々ゲームしてるよYouTube見てるよってなると、そりゃあ支援の情報は入ってこないわけで、そういう子たちに出会っていくのはすごく大変だったりします。

サンカクキチという居場所

 ここからちょっと具体的な活動の話を。

 サンカクキチとはサンカクシャで作っている居場所です。

 今は週3日ぐらい開けて、ご飯食べたりゲームをしたり漫画読んだり自由に過ごせる場を作っています。10年ぐらいこの活動していますが、学習支援が主流だった時代って、勉強しない場所を作ろうっていって居場所を作ると、地域の人たちやいろんな人たちから「なぜ勉強させないのか」ってめっちゃ怒られて、「ゲーム楽しいんっすよ」って答えたら、ますますめっちゃ怒られていたんですけど、やっぱなんか社会は変わっていくんだなと思って。

 今、居場所っていうとみんなが賛成するじゃないですか。社会が変わったなっていうのをすごい感じています。当然サンカクシャも、学習支援という看板はとっくに捨てちゃって、勉強はしていないんですけど、フタを開けるとこういう場で勉強しだしたりする子がいるんで、子どもって不思議だなと思います。

 サンカクキチは、IKEAさんがサポートしてくれて内装の提案をしてくれました。ビルに何もないところからIKEAさんが、利用する若者たちとうちのスタッフと地域の人たちと一緒にワークショップをやって、どんな場を作りたいかっていうのを聞いて提案してくれたものが、ショールームみたいなもので。

 最初すっげー居心地悪かったんですけど、やっぱ慣れるもので、今は皆ここで死ぬほど寛いでいます。

 前まで一軒家を使っていたんです。そうすると若者は入りやすいんですけど、地域の人たちすごい入りにくくって。要は、知らない人ん家に入るのって大変じゃないですか。なので、地域の人ももっと気軽に来れるように、特に大人が来やすくなるような場も作りたいということで、仕事もできるスペースとして、コワーキングスペース風のある建て付けにしました。 

 今、社会人の人が普通に来て、知り合いがここで仕事したり会議したりってことが起きて、すごく良かったりします。

サンカククエストという名の仕事体験

 あと最近、サンカククエストという名前をつけて、仕事のサポートをしています。

 仕事っていうと皆引くんですけど、クエストって言うとちょっと楽しげな響きがあっていいかなと、些細な抵抗をしてみたんです。

 今、地域のいろんな企業の方が若者を応援したいって言ってくれて、単発で仕事をいただいたりとか、実際にアルバイトで採用してくれたりとか、いろんな関わりをしてくれてる企業があったりします。

 今日も私は朝、死ぬほど方向音痴な若者を1人、デザイン会社がやっているワークショップのアシスタントとしてお試しでアルバイトの仕事をくれたので、「君行ってきな」って行かせたんです。だけど、行き方がわからないと言われて、朝、彼を起こし、会場まで送り届け、今日やってきました。っていう感じで、本当にいろんな人がサポートしながらバイトをして自信つけてもらうような取り組みをしています。

 最近、このデザイン会社が組んでるならっていうことで、Web制作の依頼とか動画編集やチラシ作りの依頼とかが回ってきて、若者たちが本当にスキルなしで、パソコンを触りながら教えてもらいながら動画編集をして納品するみたいなこともやったりしています。

 飲食店の協力も最近すっごい増えています。接客が苦手な子もいるので裏方の仕事とかさせたりして。飲食店の人たちが今、若者をいっぱい採用してくれようとしたりするのですごく連携先があったりします。うちらサンカクシャのスタッフもボランティアも、若者が働き始めたら店に足しげく通いまくるので、だいたいの店員は覚えますし、「あいつがウゼー」みたいな話をよくしたりしますね。

 この写真はうちの拠点に遊びにきてくれている公認会計士です。今独立してやっていて、その会計事務所の仕事を手伝わせてもらっていて、仕訳の仕事とかも若者にやらせてくれたりしています。こういう人が居場所に遊びに来ると仕事をくれたりするので、すごくよいことだったりします。

サンカクハウスで住まいの提供

 シェアハウスも今やっていて、私は今、1週間、シェアハウスでお泊り体験ということで、今5日目なんです。毎晩、彼らが朝4時ぐらいまで起きて騒いでいるので、それに付き合って毎日4時まで起きてるっていう感じです。シェアハウスは4拠点で26人分の部屋があって月3万円で入居できるんですけど、だいたい最初は所持金が1000円以下の子がほとんどなので、家賃の回収がほぼできないという大変なシェアハウスになっています。今、男子用の拠点が3つで女子用の拠点が1つ。これもIKEAさんのサポートで家具を提供していただいています。スタッフを常駐していないので週2、3回だけ行くんですけど、本当に大変な子たちがいっぱい住んでいるので、大変な子と大変な子が掛け算になってとんでもないことになっています。この前、盗難事件があったので、私が見張り役で1週間泊まっているところです。

世界的な大企業Apple(アップル)との連携

 この前やったのがAppleさんとの取り組みです。今Appleがグローバルで同時開催している「Creative Studious(クリエイティブスタジオ)」という取り組みがあるんですけど、そのApple日本支部になぜか私達が選ばれて連携をしました。これがすごい良くて。

 この写真はApple Store(アップルストア)なんですけど、実際に行ってみると、映画作っているプロの人とか、カメラマンの人たちがメンター(助言者・指導者)についてくれて。あとストアのメンバーがサポートしてくれて、写真の撮り方とか映像の撮り方とかを教えてくれて。クリエイターの人たちがどうやって食っていけるようになったか、みたいな話もされました。実際にAppleの本社がある六本木ヒルズの46階だかに会場をお借りして、若者たちが自分で写真撮ったり動画撮ったりしたものをプロにレクチャーしてもらうっていうことをやったりしました。

 こんな感じでプロのカメラマンがどんな機材を使っているのか、300万円もするカメラを持たせてくれて。絶対に落とすなよって思いながら見ていましたけれど、そういう取り組みをやって、若者たちが最後に作品を作って発表するって回をやったんですけど、彼らの内面が表れたりして、すごいよかったです。

 最初、人に見られるのが嫌だった子たちが、慣れてくるんです。Appleの人ってすごいパリピ(パーティ好きな人、集まって陽気に騒ぐことが好きな人)みたいな感じなので拍手で迎えてくれたりするんです。なんかすごい苦手なんですよ、ああいう空気。なんですけど、ああいうのにも慣れて、写真も撮られ慣れて、動画も無茶振りさせられ慣れて、ってやっていくと、だんだん何かおかしくなってきて、みんな写真撮ってくれってモードになってきたり、発表して自信満々になっちゃったりする子とかいて。

 当然逃げちゃう子もいたんですけど、やっていくうちに、彼らが最後に発表して、良いフィードバックをいっぱい受けて、プロに評価されてすごい自信がついたみたいです。これをきっかけにだいぶやる気が出て仕事に就いたりする子がいたりして、なんかこういう支援もありだな、とすごく感じました。

 コテコテの就労支援とかもありなんですけど、こういうガツンと刺激を与える非日常のサポートっていうのは結構大事だなと思うんで、こういう機会をこれから増やしていこうかなと思っています。

つながってから自立まで アウトリーチからやっています

 サンカクシャの活動をまとめると、今までのパートで話してないんですけど、まずアウトリーチ、つながりを作るところからやっています。その後に安心できる場所を提供します。これが居場所とかシェアハウスだったりします。その次に社会参画の支援というところで、つながって安心できる場ができたのはいいんですけど、それだけで生きていくことはできないので、実際に仕事をして自分が何に向いているか探したりとか、働く自信がなかったら自信を身につけていったりとか、いろんなことをしていろんな人と触れ合っていって、どうにか暮らしていけるような感じになったらいいなと思っているので。

 こんなの4つのステップを、大体3年とか5年かけてサポートしていくと、それなりに自立していくようになるんじゃないかなって思ったりしています。

 こんな活動をやっていて、いつもだいたい講演っていうのはここで終わってあと 質疑応答で役割終わったなって感じなんですけど、今日は1時間あるので、後半はもうちょっと面白い話をしようかなと思います。

3周年記念のスライドをお披露目

 団体が3周年を迎えたときに、3年間を振り返るスライドを内部向けに作ったんです。たぶんあんまり外に公開してないスライドなので、今回はお披露目な感じで、団体の設立から流れを追ってみたいなと思います。

 団体立ち上げの頃って、本当に何もなかったんです。このスライドの写真が一番最初に、サンカクシャで借りた拠点です。外観がないんですけど、スーパー金持ちから1.7億の豪邸を月3万円で借りるというミラクルがありまして!

 このプロジェクトを共有しようと思います。

まずはマクドナルドから長岡さんちへ

 さっき学習支援をやってたと言ったんですけど、一番最初の教え子達の彼女にたまたまつながって、その子の勉強も教えてたんです。その子は高校に入って1ヶ月ぐらいで中退したんですけど、中退の背景が妊娠だったみたいです。当時は、妊娠したら学校を辞めるみたいな感じの雰囲気があって、学校を辞めることになったんです。本人は産む気満々なんですけど、彼氏は一緒に子育てをする感じじゃなくて。

 その後たまたま会った時に、「子どもが生まれるんだって?」って聞いたら「ああ生まれるよ。私、これまでさんざんな人生だったけど、子どもが産まれるときに人生をやり直したいから、高卒認定をとるために勉強を教えてくれ」って言われて。こんなこと言われたら教えないわけにいかないじゃないですか。

 当時はとくに会場も持っていなかったので、近所のマクドナルドで勉強を教えてたんです。毎週2回とかやっていて、そういうのをFacebookとかに書いてたんですよ。こういう教え子が今こんな状態でマックで勉強してます、って書いたら、知り合いの区議会議員の人が見かねて「マックで勉強しないで」って言うんです。「でも会場ないんですけど」って答えたら、「知り合いが築80年の古民家でよければ貸せるよ」って言ってくれて、見学にいったんです。築80年古民家、長岡さんちっていうんですけど、そこを貸してくれて。

 「週1回勉強するのに使っていいよ」って言われて、それと「たぶん子育てのサポートがあった方がいいから私の知り合いの助産師さん紹介するから、助産師さんと一緒に見たら」って話になって、助産師さんにも会いました。その助産師の高橋さんは今も、若年の女性の支援をしています。

 そんな感じでその長岡さんちで、その子の勉強を見ることが始まったんです。

 私たち、けっこう適当なんで、この日にこの子もつれてきてもいいかな、ってどんどん人呼んじゃいまくってたら、結局、勉強を教えてた子どもたちがみんな来て、20人くらい集まっちゃって。

 最初その子の為だけに家を借りていたのが、20人くらいの溜まり場になっちゃって。半分くらい怒られながら、「若者が集まってるらしい」っていう声を区議会議員さんがいろんなところに触れ回ってくれたので、豊島区の課長さんも見に来たんです。

 当時は課長の顔だとか全然知らなくて、その辺のおばちゃんかなと思って喋ったんです。そしたら豊島区の政策を作る時期に入るからと、インタビューして聞いてくれて、18歳ぐらいの子たちが高校生たちの居場所がないことを言って、その報告書に入れてもらったんです。

 そういうつながりがあって若者課ができたところが、その後に大きかったと思います。

 若者がたくさん集まっちゃった築80年の古民家の長岡さんちは、地震があると本当に崩れそうで心配なので、一旦建て直ししようということになってしまい、使えなくなっちゃったんです。

グッチの服を着たワンちゃんがいる家

 つながった課長さんたちにいい場所はないですかって聞いていたら、たまたま区に、一回だけ電話があって「うちの場所使っていいよ」って言ってくれたものの、そのまま入院しちゃってた人がいたんです。その人にもう一回コンタクトをとってつながったのが、丸山さんです。70才のおばあちゃんで、区の人と一緒に会いに行ったんです。

 そしたらちっちゃいワンちゃんがいて、グッチの服を着ている。これは自分たちが着てる服より犬の服の方が高いだろうと思ったんですけど、そのワンちゃんとおばあちゃんが出てきたんです。3階建てで2・3階が居住スペースで、豪邸に1人で住んでたんです。めっちゃ家が広かったです。

 団体の活動の説明を一生懸命して、おばあちゃんはあまり聞いてなかったんですけど、とりあえず説明して貸してくださいみたいな話をしたんです。あんまりに聞いてないから無理だなと思っていたら、ワンちゃんが私になついていたらしくて。

 急に娘に電話し始めて、「1人の若者が来ていて、ネネ(犬)がなついているからこの子に家を貸そうと思う。あとよろしく」って。「今、娘がイタリアから帰ってくるから、イタリアから帰ってきたら、娘とやりとりして」って言われたんです。

 「金ないです」って言ったら月3万円でいいって言ってくれて。おばあちゃんの引越しを手伝って、家を借りたって感じです。

 丸山さんは、豊島区で年商5億ぐらいの不動産会社をやっているんです。当時自分は寄付をお願いとかするのが苦手で。でもお金ないじゃないですか。丸山さんの娘が社長を継いでいるんですけど「あなた代表でしょ、お金集めなきゃいけない立場でしょ。お金欲しいってことを躊躇しないで言いなさい。あんたいくら欲しいの。」って言われて、何を聞かれているんだろう?ってなって。何て言ったらいいのかなと思って「120万円ですかね」って答えたら、「わかった」って言って寄付で120万円振り込んでくれて。そこから不動産会社の仕事も若者にくれて、そういうことで、最初の拠点ができたんです。

 ちなみにもっと言うと、団体立ち上げの時って本当に何にもなかったんです。それを見かねた理事の人が20万円でよければ寄付するよって言ってくれて、そのあとさっきの丸山さんに会って、拠点が整ってきて、こんな感じで始まったのが2019年くらいです。

出世払いで博報堂にロゴのデザインを作ってもらう

 このサンカクシャのロゴ、なかなか素敵だと思うんです。

 最初、若者に「ロゴを一緒に作ろう」って言って、三角形の中にカタカナでシャって書いたものに(仮)って付けてFacebookのページとかに使っていたんです。そしたら、たまたま知り合いの広告代理店の人が、「こんなロゴじゃだめでしょう」って言ってくれて、「私が手伝うから1回会社来なさい」って言われて行ったら博報堂だったんです。

 「私が仕事でやったら本当は100万円かかるわよ」って言われて、「出世払いしまーす」って言ったらほんとにただで作ってくれて。「ついでに名刺作ってもらっていいですか」って、その辺から図々しくなってくるんですけど、そんな感じでサンカクシャの名刺も作ってもらって、「出世してこのロゴを広めます」って約束して、サポートしてもらいました。

ボランティアの応募が100件以上もくる

 団体設立前から活動していたので子どもたちは当然集まったんですけど、スタッフが私1人だったので人手がいなさすぎて。ボランティア募集したら、なぜか100件ぐらい応募が来たんです。調子に乗って、みんな良い人たちだったんで44人ぐらい採用したんです。そしたら当然私1人なんで、さばき切れないのと、私意外と初対面は人見知りなので、あんまり新しい人たちと仲良くなれないんです。未だにサンカクシャにくるボランティアの人たちとあんまり喋んなくて。私はスタッフとだけ喋るんで、愛想悪いんです。

 1人でボランティア全員の相手をするのもしんどすぎて、さばききれなくて、大半離脱して、ってことが起きました。

 人が多ければいいもんじゃないってことを学びました。

サンカクシャ設立記念パーティー

 団体設立記念パーティーもやりました。

 私も活動が好きすぎて、お金を使っちゃえって、なっちゃうタイプなんです。団体立ち上げのあとの口座残高が29円だったんです。理事にお金借りて団体やって、大変だったんですけど、そういうのをやっていると何が起きるかっていうと、みんなこぞってサポートしてくれるんですよ。それに味しめたのがこの時ですね。記念パーティーには70人くらい来てくれて。ちょうど誕生日だった若者をお祝いしたりして、居場所作りとかの活動をやっていました。

タピオカ屋をはじめました。

 この辺から面白くなってきました。

 若者たちでもヤンキーみたいな人達もたくさん集まってきて、ひきこもりの子がいて、なんかこう絶対に教室だと交わらない両極の属性の人たちが居場所に来るって感じだったんです。

 ヤンキーの子たちで当時はやたらタピオカが流行っていて、「タピオカ屋さんやりたい」というので、「下の丸山さんちの駐車場が広くね?」って言って許可を無理やりとって、「皆でやってみない?」って言って、タピオカ屋さんをやったのがこの写真です。

 皆でタピオカの仕入れしたんですけど、当時めっちゃ人気で仕入れができなかったのを頑張ってやっていました。

 近所の80歳のおばあちゃんが一人暮らしで寂しいからと、ここで20分ぐらい立ち話するんです。若者と喋りながらタピオカを飲むんですけど、おばあちゃんの喉に詰まったら大変だな、と思って見てました。でも何かそういう機会を通じて、この時の若者は結局、このおばあちゃんをサポートしたいということもあって福祉の道、大学の夜間に通って、社会福祉士の資格を取ろうとしています。

助成金700万円獲得!

 この頃、たまたまセールスフォース・ドットコムの人を紹介してもらって。この「たまたま紹介してもらった」っていうのはよくないですね。私、一応企業で勤めていたんです、一瞬だけ。そのときに、たまたま新規事業室に入れさせられて、新規事業をやっている人たちとのつながりがちょっとあったりしたんです。あんまり仲良くないんですけれど、駄目もとで団体立ち上げときに相談に行ったんです。そしたら、自分の知り合いがセールスフォースで働いていて、社会貢献の部門やっているから紹介するよって言ってくれて。

 最初は何にもおきなかったけど、サンカクシャを立ち上げた話をしたときに、なにかユニークそうだしロゴもかわいいからと、設立パーティー来てくれたんですよ。その時、助成金(の応募書類)を出しなって言ってくれて。公開されてない助成金に書類を出したら700万円ぐらいとれて、そのときに初めて人を雇ったんですよ。

 自分の給料は最初から出すと決めていたので、自分も食えるかどうか心配だったんです。人を雇うかって時にもすごい心配で。学生の頃からずっと一緒にやってくれているメンバーがいて、「お金が入ったから一緒に働くか」って声をかけたら、会社辞めて働くってなって、1人目を採用しました。

 口座をずっと毎日見ていたら、入金と出金が人が増えた瞬間になんかおかしくなって、(給料日の)25日が近づくと私はちょっとブルーな気持ちになるんですよ。25日を迎えると、すごい暗い顔するっていうのが当時で。入金の目処なんてないのにお金だけ出て行く。700万円もらうと、そこからカウントダウンで減っていくじゃないですか。恐怖でしかなかったっていうのがこの頃ですね。

コンタクトレンズのシードからの連絡。文京区の拠点完成!

 そんなこんなで、豊島区で活動していたら、この活動を知ってくれた文京区が「うちの区でもやってくれ」って言ってきて、文京区でも活動しようってなったんです。

 団体立ち上げて間もなかったんで助成金の書類もなかなか出せなかったんですけど、社協の人たちが代わりに助成金の応募書類を出してくれて、WAM(福祉医療機構)のモデル事業の助成金に通っちゃって、やることになったんです。

 そうしたらたまたまこの日、社協に電話がかかってきて、コンタクトレンズのシードっていう会社から、「本社の隣のビルを取り壊しするまでの間、誰かに使ってほしい」と言われて、これはもう借りるしかないと思って物件を見に行って借りたのが文京区の拠点です。

緊急事態宣言発令!

 文京区の拠点作りが始まって、WAMの助成金を取って、居場所を2拠点動かしている中でコロナになって緊急事態宣言があって大変だったんです。

 とにかくいろんな会社からパソコンもらってZoom繋いだりして、若者たちとZoom使ってやったりしていたのがこの頃でしたね。

オンラインサンカクハウス始動

 最初、オンラインゲームは、あまりやっていなかったから、「どうぶつの森」を一緒にやったり、LINE通話しながらゲームしたりみたいなことをこの頃はやっていました。居場所でなかなか会えないから、「Zoomで会おう」ってなって、ひたすらタイピング練習を皆でしていると、「Zoomつまんねえな」っていう声も、こういうところから聞こえてきたっていう感じです。

シェアハウス設立と助成金獲得の極意について

 今、シェアハウスをいっぱい作っていますけれど、きっかけはコロナで仕事なくなっちゃった子がいたんです。

 深夜に「ちょっと俺の働いているホストクラブに来てくれないか」っていう電話があって、「いや行きたくない」って断ったら、「今日お客さん来ないと自分の仕事がなくなって、寮付きの仕事だから家もなくなっちゃうんだ」って言われたんですけど、「ホストクラブだけは行きたくない」って言って、翌日会うことにしたんです。

 本当に仕事辞めちゃって家がなくなっちゃってたんです。

そのタイミングでたまたま、オリンピックが延期になって民泊から撤退した業者がいて、それがさっきのお金持ちの丸山さんたちの不動産会社だったんです。

 「荒井くん達こういう物件空いてるけど使う?」って言われて、「あれ、これ人住めるな」「あいつにいいんじゃないか」と思って。

 「家賃16万円ぐらいかかるけれど財源はない、でもあいつも家ないしな」で「借ります」って言っちゃって、あとで事務局にめっちゃ怒られました。「財源が無いのに物件勝手に借りてくるな」って。それはそうなんですけど「あんた死ぬ気で助成金書きなさい」って言われて、いっぱい出したら、コロナの時は助成金の募集がいっぱいあったんですよ。

 900万円くらい取れて、ラッキーな感じでした。この時、活動を先に作って切迫感を出しまくると、助成金の申請が通りやすいってことがわかりました。

若者が運営するカフェオープン、赤字たれ流し

 これもどうでもいい話ですけど、タピオカ屋さんやりたいって子がいたじゃないですか。文京区のシードさんの物件ですが、1階の元々カフェがあった居抜きスペースと、2階の居場所のスペースを両方借りていたんです。

 シードさんから、タピオカ屋さんをやっていたんだったらカフェをやってくれないかって言われて。「お金は出ませんがやってほしい」って。何を言ってるんだと思ったんですけど、みんなに聞いたらカフェやりたいって言い始めて。クラファン(クラウドファンディング)をやって、カフェをやったんです。

 若者たちには、お金がなかったり、コロナでバイト無くなっちゃったりしてたからバイト代を出そうってなって。

 死ぬほど赤字が出て、もう一生カフェはやんないって思いました。彼らは接客が別に得意じゃない。なんか愛想が悪いんです。地域のおばちゃんたちがカフェに来るんですけれど、「すごく愛想悪い」ってクレームがきたりしました。それでもこの場で若者が就業体験したりとか、クラファンでサポートしてくれる人が結構いたりして、地域にサンカクシャの名前がすごく知れわたったので、まあいいんですけど、もうカフェは一生やんなくていいやって思いました。 

 でも最近ネットカフェ難民がうちに相談に結構くるんですよ。ネットカフェやったらいいんじゃないかって最近思っているんです。カフェやるっていうとみんなやりたくないけど、「ネ」がつくだけで「ネカフェは俺らの領域だ」みたいな感じで、ネカフェだったら働きたい子とか出てきています。このへんは慎重に考えています、大変ですから。めっちゃ周りの人はいいねって言ってくれるんですけど、赤字たれ流して、団体もお金ないのに赤字になって、苦痛でしかなかったですからね。

シェアハウスに若者が続々と入居

 この辺からシェアハウスの入居希望者がすっごいたくさん来ました。行政の人たちからの要請で、コロナで仕事がなくなって一人暮らしできない、そういう子の相談を結構たくさん受けたんです。

 若者がどんどん増えていって、私もこのへんからシェアハウスへの泊まり込みが始まりました。シェアハウスの拠点で仕事をして、オンラインで会議する横で若者が寝てるみたいな、そんな生活を今はやっています。

ゲームで若者とつながる

 コロナになって、やっぱりつながりにくいよねってなったんで、あの手この手でつながり作りを考えようってなりました。

 最初から、サンカクシャは居場所でゲームしかやってなかったんです。行政が人を案内してくれるときに、ゲームばっかりやっていたら怒られるから、ぎりぎりボードゲームだったら許されるんじゃないかって、ボードゲームで遊ぼうってことにしたんですよ。ボードゲームを並べている横でみんなスイッチ(持ち運びができるゲーム機)をやってました。

 教育センターのスタッフたちがここに来たり、大学生にも来てもらったり、という感じの取り組みをやってみて、つながりを作っていく取り組みをどんどん開発しないといけないなと、いろんな模索が始まりました。っていうのはコロナになって、つながり方にすごい悩んでたんです。

新しいスタッフが増えた

 コロナのタイミングで助成金の募集がいっぱいあって、サンカクシャには本当にお金がない一方で活動とかニーズが結構あったので、どんどん助成金の申請を出しまくって、毎週1-2本くらい出しまくってました。

 私ADHDの傾向があって文章を書くのがすっごい苦手で、嫌いなんです。締め切りにならないとやらない怠惰な性格なんで、本当に助成金の締め切りの1日前とかに徹夜して出す、みたいな感じだったので、この頃、週2日は徹夜していました。

 それで助成金が取れると人が必要になるので、人をめっちゃ増やすという感じで、そうすると何が起きるかというと、拠点の家賃も増える、人件費も増える、大変になるっていう感じで、初年度の予算規模は2000万円ぐらいで、2年目で6000万円ぐらいになって、去年7000万円ぐらいになったんです。

 最初は30-40万円ぐらいの支出で、次は100万円ぐらい出る。だんだん200万円とか300万円とかになって、今だとだいたい5-600万円出ていくんですよ。もう憂鬱すぎて。もうやっていける気がしないと思いながらやっています。

カフェ閉店で実は大喜び

 カフェの物件は元々取り壊しが決まっていた物件なんですが、コロナの影響で取り壊しが延びたんですよ。だから「あと半年延びました」ってニコニコして言われたんですけど、こっちからしたらたまったもんじゃなくて、取り壊しが決まってすっごい良かったです。

新しいスタッフが増えたパート2

 またコロナの影響でスタッフが増えて、今、スタッフ大体20人ぐらいいるんですよ。今うちがどうやってお金を集めているかっていうと、毎年毎年1年間の助成金をいっぱい取っていて、今20本以上取ってるんです。本当に良くない。この半年ぐらいで2400万円ぐらい消えるので、あと半年でまた2400万円取らなきゃいけません。

仕事を与えると、喜びます

 文京区の拠点を作ったんですけど、それが物件の利用期間だったりとか、ちょっと狭くなったりとかして、引越しが必要になって、支出が多くなっています。

 このあたりから地域の人たちとの連携がけっこう始まって、企業の人たちにも参加してもらって、こちらが何かバイト(仕事)をくださいって言ったら、バイトをくれるようになって。 

 今までは、ほとんど1人1人の子と関わっているだけ、場があるだけだったけど、これを「サンカククエスト」って名前をつけて、事業名をのっけていったら、助成金を取れやすそうだなと感じました。それと、地域の人に名前を知ってもらえるようになってきました。

 今、地域のいろんな人たちがサンカククエストって言ってくれて、「仕事を与えると、この団体は喜ぶ」みたいな感じに思ってもらっています。こういう名前をつけていったのがこの時期からですね。こういうのをやっているとなんだか組織っぽいじゃないですか。本当に1人1人としか関わってこなかった団体に事業名ができるっていうのは結構、面白いことなんじゃないかと思います。

豊島区と仲良し

 そんなことをしていたら、行政からいっぱい支援が必要な子の紹介が来るんですよ。うちとのつながり方って、基本的に行政の紹介です。何でかというと、例えば「行政は中学までしかみれないから高校以降みてほしい」とか、基本的に行政の支援が途切れる段階で気になる子っているじゃないですか。それを、「サンカクシャさんみてください」っていう形でつないでくるんです。そうすると、うちには自立安定するまでの3年間ぐらいいるわけで、シェアハウスに受け入れると1人だいたい200万円ぐらいかかる計算なので、1人とつながるとうちは3年間のサポートの時間と200万円の支出が確定するんです。だけれど、行政の人たちはサンカクシャとつながったからハッピーという感じでいるんです。なんかそれもどうかなあとも思うんですけれど。

 でも豊島区とはすっごい仲良くて、担当者の人たち1人1人がうちとずっと仲が良いんですよ。それぞれの趣味も把握しているぐらいで、街ですれ違ったりしてもお互いに気が付きますね。

 サンカクシャは教育と福祉とか、いろんな課をまたいで連携していたりするので、「若者支援をする団体のネットワークを一緒に作りませんか」みたいなお話がありました。「行政がやると堅くなってつまんなくなっちゃうから、サンカクシャさん入ってください」って言われて。 

 うちはとにかく楽しくするっていうのと、行政が呼べない人たちを勝手に呼ぶっていう、ちょっとやんちゃなことをやる役割を担っていて、行政の人たちはその辺を紐付けたりとか、ここの会議の声を上に反映させて、みたいな役割を担う。

 豊島区は居場所会議というものを作ったりして、行政との連携はこの辺からガッと増えたりしています。

 明日はサンカクシャの拠点に人を呼んで、うちにあるゲーミングPCをおばちゃんたちにレクチャーして、シューティングゲームをおばちゃんたちにやらせるっていうのをやります。カレーを食べながら。

シェアハウスを増やす 池袋の大地主の金持ちから格安で借りる

 シェアハウスがずっと定員オーバーなのに、相談がいっぱい来たんで、シェアハウスの拠点を増やしたり、DIYやったり。

 この前、丸山さんの(犬の)ネネちゃんが亡くなっちゃったんですよ。そしたら「私も死ぬかもしれない」って言い始めて、「死んで迷惑かけたくないから身辺整理を始める、家を売る」って言い始めて。うちのメインの拠点だったんですごく困ったんです。そしたら、丸山さんが「うちの都合で申し訳ないから」って言って、いろんな人を紹介してくれて。

 池袋の大地主の金持ちが持っている物置きを、拠点として借りました。3階建てのビルなんですけど、1階にポルシェが4台あって、総額2億円らしいんで、怖い、ぶつけたくない。これを無理くり、相場よりだいぶ安い家賃で借りて、引越しのお金とか初期費用とかは全部丸山さんが100万円くらいポンと出してくれて。「ごめんね」って言われて、「いやむしろありがとうございます」って言って。こんな感じで拠点を作っていっています。

eスポーツはじめました

最近eスポーツのチームを作ったんです。

 若者たちはシェアハウスでずっとゲームしていて。シェアハウスやってよかったのは何かっていうと、彼らが朝起きてから寝るまで何をやっているかを見ていられることです。Youtubeを見てゲラゲラ笑ってパスタを茹でて食べて寝る、みたいな暮らしをずっとしていて。こういう若者がいっぱいいるんだっていうことをすごく思いました。

 彼らが見ているYoutubeチャンネルや使ってるアプリを全部教えてもらって、やっているゲームとかも教えてもらって、「APEX」というゲームを彼らから教えてもらって、やりました。私、シェアハウスに朝から晩までいるし、彼らに負けたくないんで、一人でコツコツ練習をして、今2,800時間を迎えました。

ゲーミングPCを8台も寄贈してもらう

 そしたらゲーム好きな若者からの相談が増えて、「荒井さん、このゲームやってるんだったら一緒にやりましょう」みたいな声があがるし、行政の人が不登校でゲームしかしてない子を紹介してくれるっていうのが増えてきました。

 皆ゲーミングPCが欲しいらしく、「拠点を引っ越すから、せっかくだからゲーミングPCを置ける部屋を作るか」って言って、いろんなPCの全メーカーに問い合わせしました。

 値引き1万円だけという会社が多かったんですけど、サイコムという会社が話を聞いてくれて。

 「何台ほしい?」って言われて、最初6台の予定だったんですけど、調子に乗って8台って言ったらそのとおり寄贈してくれました。ものがそろったので若者と一緒に組み立てをして、家具はIKEAさんから寄贈してもらってできたのが、eスポーツルームでした。サンカクキチの一室がこんな感じになっていて、ほとんどネットカフェみたいになっていて、すごく良い空間を作ってしまいました。

Youtuberには相談する若者たち

 若者を見ていると、なぜかYoutuberやゲーム配信する人には悩み相談をめっちゃしているんですよ。それを見て、なんか相談窓口にはいかないけどYouTuberとかには相談しているんだとわかったんで、調子に乗ってVtuberを始めました。忙しすぎて今はまったく更新してないんですけど。でもこれを通じて、すごい出会いがありました。ゲームの大会を開く権限って、コネクションがないとできないんですけど、この出会いのおかげで、この前eスポーツ大会を開くことができて、40人ぐらい若者が集まりました。参加者の半分ぐらいはTwitterで募集して、なんかちょっと不登校気味とか友達がいないやつとか、そういう子をめがけて声掛けして、ゲームで初めてつながって、仕事の相談にも乗ることもできています。

eスポーツチーム「OWLRISE」発足

 この大会運営のメンバー中心にeスポーツチームを作ろうってなって、その中の何人かはプロチームを作りたいって言っています。プロを目指して育てている子がいるので、その子たちでプロチーム作ろうということになって。

 ちょうど来月から世界大会が始まるんですけど、予選にエントリーしていてます。

 ゲームを使って、オンラインでの相談支援をするとか、オンラインの居場所づくりとか、eスポーツ大会やるとか、動画編集で就労支援もしています。

Twitterでつながる

 これが最近の私のTwitterです。

 前はゲームのことばっかり書いていたんです。で、たまには団体の活動の紹介でもするかって言って、シェアハウスのハッシュタグをつけたりとかして「うち3万円でシェアハウスありますよ」って送ったら、めっちゃDMが来て、「ネットカフェ難民です」とか、「家を追い出されたし所持金がない」みたいな話や相談がくるんです。

 なにかこのあたりから、こういう支援を必要としている子がいるんだってことがわかってきました。今のサンカクシャはTwitterからの流入もすごく増えてきてっていう感じになっています。

 見えてきたことがあるんです。半グレみたいな人たちが、家を借りてそこに2段ベッドを5台くらいいれて、住むところがなくて困っている若者1人から家賃3-4万円位とっているんです。たぶん1軒13万円くらいのところを借りて、家賃を30-40万円くらい若者たちから巻き上げて儲けてるみたいな人たちがいるんですよね。若者に仕事あるよって誘って斡旋して、ちょっと裏の仕事もさせたりとかして搾取する、みたいなことが結構あったりして。半グレみたいな人たちは、Twitterで若者をものすごく勧誘しているんです。うちには、そこから逃げてくる子たちが問い合わせしてくるっていうこともすごく多くて。それに負けないように頑張ろうと思って、今100部屋を増やそうと思ってやっているんです。現状として、若者から搾取するようなことが起きていることがわかりました。

 …という感じで活動をやってきたんですけど、やっぱり若者たちの価値観に合った活動と、自分たちの団体のキャラクター作りで割と時間を割いてきたなっていう感覚があって、つながったあとどうするかって話を最後にちょっとだけします。

 東京では生活コストが高かったりするのと、スピードが合わないとか、人が多くて嫌だっていう人が結構いるので、地方で生きるっていう選択肢を作れないかな、って今模索中です。

 地方拠点をこれから作っていくんですけど、サンカクシャが実家みたいな機能になっていきます。親の代わりになるサポートをしてほしいという依頼をうけて、とにかく彼らと出会って、一時期、私たちががっつりサポートしたら、親元を離れるように去って行って、何かあったら相談に来るとか、たまに帰ってくるみたいな、そんな実家みたいな機能、そんな取り組みを全国に増やしていこうかなと思っています。

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